コロナ禍による結婚式の需要減少など、花き業界を取り巻く経営環境が劇的に変化するなか、堅実な成長を遂げているのが埼玉県入間郡三芳町に本店を構える有限会社花匠だ。冠婚葬祭や卒業式などの各種セレモニーで使われる花々の提供だけでなく、首都圏のスーパーに店舗も持つ同社では、ホームぺージ(HP)での情報発信を集客につなげている。花匠が取り組むHP戦略について、代表取締役の尾﨑由幸氏、そしてホームページ担当の尾﨑恵子氏に話を聞いた。
──事業内容は?
尾﨑(由) 28年前、私が32歳の時に起業した当初は葬祭セレモニーへの花の提供が主力事業でしたが、現在では、冠婚葬祭や入学式・卒業式などのセレモニーに合わせて花飾りを行うほか、アレンジメントやブーケ、オリジナルのプリザーブドフラワーなど多彩な商品を扱っており、JAなど大手のお客さまにも利用いただいています。
また、埼玉県内のスーパーにも4店舗出店しています。
──強みは?
尾﨑(由) まだ規模は小さいですが、地域に根ざした企業として取引先さまから信頼をいただけている理由の一つが、鮮度が良く質の高い花材を扱っているからではないでしょうか。セレモニー用の花飾りは急な依頼がほとんど。そんなときにも鮮度の良い美しい花で会場を彩ることができます。これは、仲卸業者の方との長年のおつきあいのたまものです。また、同じセレモニー用の花といっても、求められるテイストは地域によって少しずつ異なります。ニーズに合ったアレンジメントや花飾りを提供できるのも当社の強みです。
──収益の柱をいくつかお持ちなのも強みですね。
尾﨑(由) セレモニー需要がコロナで落ち込んでしまった際にも、小売りという収益の柱がありました。事業環境はどう変化するかわからないので、リスク分散という意味で販売チャンネルも事業も複数あると安心です。当社はこれまで取引先さまからお声がけいただく形で小売店舗の出店を実現してきた経緯があります。仕事を着実かつ丁寧に行うことで、事業を広げるきっかけをつかんできました。
──HP会設のきっかけは?
尾﨑(恵) 時代の流れとしてHPは必要だということは分かっていました。ところが、HP制作会社を探せば探すほど「一体どこに頼めばよいのか」とわからなくなり、税理士法人細田会計事務所に相談したところ、アイ・モバイルさんを紹介してもらいました。信頼している税理士事務所さんのおかげで、一歩踏み出すことができました。
──HPのコンセプトは?
尾﨑(恵) まずは花の写真を多く掲載し、見てくださる方に当社の商品の魅力を届けたいと思っていました。花は母の日やハロウィーン、クリスマス、バレンタインなど季節ごとに訴求したいものが変わります。季節需要に応じてHPに掲載する写真を変えられるようにしたい、というのも希望でした。
──どう活用していますか。
尾﨑(恵) 当社では前述の4店舗に加えて、本店でも小売販売をしています。しかし、本店は倉庫や本社オフィスとしての機能もあるため、店舗としての体裁がそれほど整えられていません。外から見るとフラワーショップとは到底思っていただけないのが現状です。
そのため、「どんな花が買えるのか」「そもそも販売しているのか」という点を明確に伝えるため、新しいHPには本店も含めて各店舗の情報をしっかり掲載しています。
従業員からアレンジメントなどの写真を集め、できるだけ多く掲載しています。自分たちで写真を掲載すると、写真のサイズがバラバラになり、画面のレイアウトが崩れてしまうのですが、アイ・モバイルさんにお願いすると整えてもらえるので助かっています。
──集客に変化はありましたか。
尾﨑(恵) ここ1、2年でお客さまが増えていると実感しています。
とくに従業員の撮影技術が向上し、写真と実物とのギャップがなくなってからはリピーターの方や口コミで来店くださる方も増えたように感じています。従業員も自分たちの制作したアレンジメントの写真がHPに掲載されるとなると、はりきるので自然とスキルアップにもつながります。
──チラシやクーポンも掲載していますね。
尾﨑(恵) 以前は印刷してお客さまに発送していたチラシやクーポンをHPに掲載することでプリント代や発送費などの削減につながっています。発送は手間がかかる作業ですから、負担が軽減されたのはうれしい発見でした。
──HP活用のビジョンは?
尾﨑(由) 当社はセレモニー需要に対応できるのが特徴なので、今後は、その部分をHPを通じてより訴えていきたいです。当社のHPの写真を見て「依頼してみようか」と思っていただけたらうれしいですね。そうすれば、HP上の花飾りを見て「こんなふうにしたい」と具体的なイメージを持って来店くださるお客さまも増えてくるのではないかと思っています。
──採用に活用する予定は?
尾﨑(由) あります。当社では、小売りからセレモニー、フラワーアレンジメントなど幅広い経験が積めます。花屋さんというと街のフラワーショップというイメージばかりが先行しがちですが、そうではない仕事もあるということが発信できたらいいですね。おかげさまで長く働いてくれる従業員も多いのですが、今後事業を発展させていくためにも若手採用や育成にも力を入れたいと思っています。HPはそのきっかけになる可能性を秘めています。